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第二回 21世紀統合医療フォーラム
「バイオフィードバック」  神原憲治(関西医科大学心療内科学講座)

 ワークショップスケジュール 
日時 C: 19日午前10時〜午前12時  
会場  普通教室          。 
定員  25名          
内容  バイオフィードバックの実践 。


★アプローチの概要
「からだの声を聞く」−バイオフィードバック

<バイオフィードバックとは>
バイオフィードバックとは…
・刻々と変化している
・今ここにあるからだの状態を捉えて
・からだの状態とその変化の過程を
・からだの持ち主に
・いまここでフィードバックし
・それを治療者と共有し
・からだの状態を知り
・からだの声を聞き
・からだを望む状態に調整したり
・気づきを深めたりする方法
…です。

私達のからだは動的なものです。
「いま」のからだと「過去」−例えば1時間前−のからだとは違います。
「未来」−例えば1時間後−のからだはまた変化しています。
例えば、心臓は常に鼓動を繰り返していて、血液は常にからだの中を循環しています。
そのために末梢血管に脈が生じ、皮膚の温度は常に変化します。汗の量は体温を調整するために
刻々と変動し、胃腸は蠕動運動を行い、筋肉は緊張と弛緩を繰り返しています。そして、心理的な
ストレスによって、これらの動きは大きく変化します。

このように常に変化しているからだの状態をとらえる手掛かりとしてさまざまな指標が考えられますが、
バイオフィードバックでは動的な変化をとらえやすい指標、すなわち精神生理学的指標を主に用いて、
それを治療的に扱います。

<バイオフィードバックで用いられる指標>
具体的に代表的なものを挙げると…。
1)筋電図:筋肉の緊張・弛緩をみる。
緊張が強いられる現代の生活では、持続的な筋緊張が関与する肩こり、頭痛、腰痛、慢性疼痛
などが問題となっています。このような病態に関わる筋緊張の度合いを捉えます。

2)スキンコンダクタンス:情動性発汗をみる。
発汗の中でも手掌発汗は中枢性で、情動の変化に対応しています。ウソ発見器はこれを用いたもので、
心理的な動揺でも鋭敏に変化します。覚醒の度合い、精神的な動揺/安定性、緊張/弛緩などを捉えます。

3)皮膚温:皮膚の温度をみる。
末梢血管の収縮拡張などによって、皮膚温は常に変化しています。
ストレスがかかると末梢の血管は収縮して循環が悪くなり、皮膚温は低下します。皮膚温はこのような
状況に応じた末梢循環の変化を捉え、自律訓練法などのリラクセーションの指標としても重要です。

4)容積脈波:末梢血管の収縮拡張をみる。
皮膚温とともに、末梢血管の変化をより直接的に捉えます。また、脈波から脈拍数が分かり、心電図を
つけなくても心拍数を捉えることができます。

5)呼吸:呼吸のパターン・深さ・速さをみる。
呼吸はさまざまな身体調整法の鍵となるものです。意識と無意識の接点でもあります。
呼吸を捉えることで、心身のさまざまな状態を推定することができます。

6)心電図:心臓の働きをみる。
心臓は言うまでもなくからだの活動の源です。身体的な状態はもちろん、心理的な状態によっても
その鼓動は大きく変化します。バイオフィードバックでは主に心拍数と心拍変動を捉えます。
心拍数は人間の生体リズムの源です。緊張すると「ドキドキする」と言われるように、自律神経系の
緊張/弛緩の総合的な指標でもあります。

7)心拍変動は、自律神経の働きを客観的に捉えたものとして、最も研究がなされている指標の一つです。
心拍変動から、自律神経系の適応の柔軟性、交感神経・副交感神経のバランス、緊張の度合いなどを
評価することができます。


<(従来の)バイオフィードバックの方法>
例として「筋電図」を考えてみます。より筋肉を緊張させると、より筋電位が高くなります。
この緊張度は自分である程度感じることができます。しかし、身体の感覚が低下している場合、
この筋緊張を自覚できないことがあります。自覚がなければそのレベルを落とす(すなわち弛緩する)
こともできません。また、自覚していたとしても、思うようにそのレベルを落とすのは簡単ではありません。
知らず知らずの過緊張が習慣化すると血流も悪くなり、慢性疼痛の持続因子になることもあります。
そうなると、疼痛のためにますます動かさなくなって緊張も強くなり、循環も悪くなる、という悪循環に
陥ります。また、書痙や斜頚などでは、筋緊張が自分の意志に反して起こってしまいます。

すなわち、
1) 筋肉の緊張に気づいていない(「知らず知らずのうちに緊張してしまっている」)
2) 緊張に気づいてはいるが、緊張を取ることができない
という2つの場合があります。

1) については、緊張が習慣化して感覚が低下してしまったり、さまざまな心理的葛藤が筋緊張に
つながっていたりします。そのような場合は、それに気づくことが第一歩となります。
2)の場合は、「なかなか思うように緊張が取れない」「力が抜けない」という場合です。
この場合は、力の抜き方を知ることが第一歩となります。

このいずれにも、バイオフィードバックが役に立ちます。
まず、筋電図をフィードバックし、力を入れたり抜いたりしたときの変化をみます。ここで、筋電位が
高いときと低いときとの「身体感覚の違い」に注意するようにします。

次に、その感覚を手掛かりに、フィードバックを受けながら、筋電位のコントロールを試みます。
これには筋弛緩法や自律訓練法などの特定の方法を用いる場合と、特に方法は用いず、自由に行う場合
とがあります。初めはなかなか思うようにいきませんが、重ねるうちに可能になってきます。脳の中に
今までに無かった新たな回路を作る、という言い方もできます。

バイオフィードバックは、コントロールできているかどうかを客観的な指標で自ら確認しながら
できるのがメリットです。リアルタイムで確認することで、身体の感覚と実際の状態とのギャップを埋めて、
気づきが高まり、正しいコントロールができるようになります。そして、最終的にはフィードバックは
なくても心身のよい状態を保てることを目指します。


<新しいバイオフィードバックのかたち:Body Awareness Biofeedback>
従来のバイオフィードバックは、身体の状態をより適切な状態にコントロールする、ということに重点が
おかれていました。このようなバイオフィードバックが有用なケースも多々あります。
しかし、バイオフィードバックの本当の有用性は、身体を思うようにコントロールすることだけではありません。

バイオフィードバックは、からだとの対話をする手段として、すなわち、「からだの声を聞く」手段として有用であり、
後述する、「一人称のからだ」と「三人称のからだ」をつなぐものとしての役割があります。すなわち、コントロール
できるかどうかよりも、コントロールを試みるプロセスにおいて、どうからだと対話し、からだの声を聞くかに
重点をおきます。患者自身のからだの状態を、いまここで信号として客観化されたものを、治療者と患者が
共に見て(共有)、共に考え、患者の主観的なからだの感覚との関係を考え、共に気づきへのプロセスを
味わっていく。このようなバイオフィードバックを私たちは目指しています。このような、気づきや対話に重点を
おいたバイオフィードバックをBody Awareness Biofeedback と呼んでいます。


<バイオフィードバックの特徴>
バイオフィードバックの特徴をまとめると、
1) 客観的で目に見える指標が得られるため、わかりやすい。また、研究面への応用がしやすい。

2) 「からだの声を聞く」方法として、からだの状態に気づく手段として、また、内的感覚を高める
  方法として有用である。

3) 患者の持つリソースを引き出し、セルフ・エフィカシー(自己効力感)を高めやすい。

4) セルフコントロールへつなげやすい。

5) 他の補完代替療法や行動療法(呼吸法、自律訓練法、筋弛緩法、リラクセーションなど)と併用する
  ことで相乗効果が生じ、その手法の持つ力をより引き出すことができる。

6) 外にばかり眼が向き、内面に眼が向かない患者(アレキシサイミア、アレキシソミアなど)に、
  内面への気づきを促すきっかけとなる。
といったことが挙げられます。


<一人称のからだと三人称のからだをつなぐもの>
本フォーラムは「心身医学と一人称のからだの出会い」がサブタイトルですが、バイオフィードバックは
「一人称のからだ」と「三人称のからだ」をつなぐものであり、心身症との関係も大変深く、まさにこの
「出会い」を実現させるものといえるでしょう。

例えば、自分では緊張を感じているが(一人称のからだ)、客観的な指標ではそうでもない
(三人称のからだ)、といった主観的感覚と客観的指標の乖離に気づくと、ここから身体的・心理的な
さまざまな気づきへとつながっていきます。

バイオフィードバックは他にもいろいろなものをつなぎます。
「主観」と「客観」、「思考」と「感覚」、「心」と「身体」、「言語」と「非言語」などです。また、バイオフィードバックは
さまざまなボディワークなどのアプローチと医療をつなぐ「言葉」としての役割も担っているかもしれません。


<今回のワークショップ>
本フォーラムのWSでは、従来のバイオフィードバックも体験して頂いた上で、前述の新しい
バイオフィードバックのかたちについても、その一端を体験して頂ければと思います。
バイオフィードバックはいろいろな手法との併用が可能なので、自分の方法を持たれている方が
バイオフィードバックを学ばれることにより、客観的指標な変化を提示でき、医療の現場での適応が
よりしやすくなるという利点もあります。実際に体験して頂いた上で、どのように応用するかを自ら
見出して頂けたらと思います。バイオフィードバックは患者さんだけでなく、セラピストのリソースをも
引き出してくれることでしょう。


<参考文献・ホームページ>
【参考文献】
1) 神原憲治 ほか 「身体感覚の気づきへのプロセスとバイオフィードバック」 バイオフィードバック研究, 35, 2008
2) 神原憲治, 竹林直紀 「バイオフィードバック」 統合医療−基礎と臨床
Revised Edition 2007 Part 2.日本統合医療学会編 182-188 (2007)
3) 神原憲治ほか 「心理療法」 治療増刊号 89, 1425-1432 (2007)
4) 神原憲治ほか 「心身症患者における Psychophysiological Stress Responseの特徴」
心身医学 45, 685-695 (2005)
5) Kanbara, K. et al.: An exploratory study of subgrouping of patients with functional
somatic syndrome based on the psychophysiological stress response: its relationship
with moods and subjective variables. Psychosomatic Medicine, 69, 158-65 (2007)
6) Kanbara, K. et al.: Paradoxical results of psychophysiological stress profile in
functional somatic syndrome: correlation between subjective tension score and objective
stress response. Applied Psychophysiology and Biofeedback, 29(4), 255-268 (2004)


【ホームページ】
MIND-BODY THINKING. COM−こころ・と・からだ・の対話−
http://body-thinking.com


<講師略歴・連絡先>
神原 憲治(かんばらけんじ)
心療内科医、医学博士
関西医科大学心療内科学講座研究主任、京都ノートルダム女子大学大学院心理学研究科 客員講師
日本心身医学会認定医・代議員・教育研修委員会専門委員、日本医師会認定産業医
大阪大学工学部を卒業後、岐阜大学医学部を卒業し、内科研修を経て関西医科大学心療内科学講座に入局。
’00年より同大学附属滝井病院にて行動医学外来を開設。’03年より医療法人まちだクリニックにて非常勤医師
’06年より関西医科大学非常勤講師の傍ら、バイオフィードバックを中心としたボディワーク施設、リラクセーションスペース・蓮を主宰。


〒570-8507 守口市文園町10-15
関西医科大学心療内科学講座
E-mail: kanbarak@takii.kmu.ac.jp
Tel 06-6992-1001


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