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21世紀統合医療フォーラム
「フォーカシング」  吉良安之(九州大学)

 ワークショップスケジュール 
日時  10月20日 16時〜    
会場  普通教室        。 
定員  25名               
内容                   。



★アプローチの概要

【フォーカシングとは】
 フォーカシング(Focusing)とは、心理療法が効果的に行われているさいにクライエント(Cl)に生じているプロセス、
 つまりセラピーのポジティヴなプロセスを理論的に明確にしたものであり、また、それを一般の人に教えることが
 できるように技法化したものです。C.ロジャーズの共同研究者であったE.ジェンドリンによって開発されました。
 
 それを簡潔に言うと、ある状況について暗々裡(implicit)に感じられている身体的な感覚、すなわちフェルトセンスに
 注意を向け、(直接のレファランス)、それを丁寧に言葉にすることによって、明示的(explicit)な意味としてとらえていく
 (概念化ないし象徴化)プロセスと言うことができます(吉良,2002)。そのキーワードを2つあげます。

 1つはフェルトセンスです。私たちはある事柄について「何か気が重い」とか「うきうきする」というように、自分にとっての
 その事柄の意味を体感(からだの感じ)で感じています。フェルトセンスとは、このような「感じられている意味感覚」の
 ことを言います。それを感じていると、その中に含まれたいろんなニュアンスを感じとることができます。それを静かに
 丁寧に感じとり、言葉にしていくのがフォーカシングです。
 
 もう1つのキーワードは、体験的距離です。フェルトセンスを感じとるには、遠すぎず、近すぎない、適度な距離感が
 必要です。体験から遠すぎて自分が感じているものを説明したり理屈づけたりする態度は適切でないし、逆に体験との
 距離が近すぎて強い情動のまっただ中に入り込んでしまうのも適切ではありません。たとえば、ある人に感じる怒りを
 扱う場合、その怒りについて感じてると、そこには「その人に理解してもらえない悲しみ」も含まれているかもしれません。
 そのようなニュアンスを静かに感じとっていくのがフォーカシングです。怒りの情動を激しく感じるだけではそれは難しく
 なります。

【私が臨床経験から考え、実践してきたこと】
 対話によるカウンセリングにおいて、Clが感じていることを語りながら、自らのフェルトセンスに触れていけるように傾聴し、
 応答することを基本にしてきました。ジェンドリン(1968)はそのような応答の仕方を「体験的応答」(Experiential
 Response)と呼んでいます。その原則は、Clに感じられている意味に応答していく、新しいいろんな面がそこから
 具体的に現れてくるようにそれを解明しようとする、Clの体験的軌道についていく、その瞬間にClが感じていることを
 正確に指し示すように応答していく、などです。
 
 私はそれを基本軸にした実践を行ってきましたが、セラピスト(Th)の体験的応答によって自らの体験に触れ展開して
 いくClもいる一方で、体験的応答を行ってもなかなか展開が難しい事例にも出会ってきました。Clの体験の仕方が
 常同的反復的で、なかなか新しい面が現れてきにくい事例です。その場合、Clの体験の仕方が変化しにくいだけでなく
 Thにも影響が出てきます。Thが強い情動(不快な気分、苛立ちなど)の虜になってそこから抜け出しにくくなったり、
 Clに対して決まりきった働きかけの反復に陥ったり、Thとして無力化させられて無力感に襲われたり、などです。

 そのような経験について考えるうちに、私は「主体感覚」ということを考えるようになりました。主体感覚とは、体験に伴う
 自律性の感覚のことを指します。「私のしている私の体験」という感覚です。体験的応答を行っても展開しにくいClの
 場合、彼らの体験においてはこの主体感覚が損なわれており、カウンセリングを行っていると、関わっているThの側の
 主体感覚も損なわれがちなのではないか、と考えるようになったのです。

 主体感覚の損なわれた体験の特徴としては、以下を挙げることができます。
 【体験の仕方】:特定の体験の反復に圧倒され振り回される、自分自身の体験だがそれに対処できず無力感を感じる、
           性質の異なる他の体験を持ちにくくなる。
 【体験の内容】:体験内容は固定的、反復的(傷のあるレコード盤のように)。
 【伴う情緒・身体感覚】:苦痛や苦悩を伴った強い情緒、強い身体的緊張。
 
 このような事例においてTh自身の主体感覚が損なわれた状態に陥っている場合、Clに対する働きかけの方策を
 考える前に、Th自身の体験の主体感覚を回復することが重要になってきます。その渦中にいたのでは、適切な
 働きかけ方の発見は難しいと思われるからです。

 そこで、Thがカウンセリングの場での自分自身の体験についてフォーカシングを行うことが有益ではないかと考えました。
 自身の体験のニュアンスを丁寧に感じとり吟味することで、適度な体験的距離をとることが可能になり、主体感覚の
 回復につながると考えられるからです。それを私は「セラピスト・フォーカシング」と呼んで、現在、いろんな臨床家の
 方とセッションを行う経験を積んでいます。

【セラピスト・フォーカシング】
 Thがある事例について暗々裡に感じていることを、からだの感じとして感じとり、吟味していくものです。体験に触れて
 いくことが基本ですが、私(吉良,2002)は以下のような手順(ステップ)を踏むことが多いです。
 <全体を確かめる>Clに対して感じている気持ちや、その事例を担当することに関連して感じている気持ちの全体を
 振り返り、思い浮かんでくるさまざまな気持ちをひとつずつ確認していく。1つ目、2つ目、3つ目というように確かめ、
 そっと置いていく。
 <方向を定める>確認できた複数の気持ちを振り返り、そのなかのどの気持ちについてさらにフォーカシングを進め
 たいと感じるかをThに問い、方向を定める。
 <フェルトセンスの吟味>Thによって選ばれた気持ちについて、フェルトセンスを吟味するなかで思い浮かんでくる
 ことを言葉にしていく。
 
 セラピスト・フォーカシングを行うなかで、Thが自分のなかに何が起こっているのか気づいたり、圧倒してくる体験から
 少し距離を置けたり、自分とClとの関係のあり方が見えてきたり、時にはClについての気づきも起こったりすることが
 確認されつつあります。


【参考文献】
吉良安之(2002)フォーカシングを用いたセラピスト自身の体験の吟味「セラピストフォーカシング法」の検討.心理臨床学研究,20(2),97-107 (*前もって読んでおいていただけるとありがたいです。)
吉良安之(2002)『主体感覚とその賦活化?体験過程療法からの出発と展開』.九州大学出版会.
吉良安之(2003)対人援助職を援助する?セラピストフォーカシング.村山正治・藤中隆久(編)『現代のエスプリ別冊 ロジャース学派の現在』.至文堂.
吉良安之(2005)セラピスト・フォーカシング.伊藤義美(編)『フォーカシングの展開』.ナカニシヤ出版.4章 49-61.




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